コラム

明日にソナエル オフィスの防災

防災備蓄は季節も関係ある?

4月、この季節に災害のイメージはほとんどありません。夏は豪雨、秋は台風、冬は火災や地震。何となくそのようなイメージも持っているという方は多いのではないでしょうか。しかし、豪雨や台風、火災の発生要因(気温や湿度等)は季節によって左右されるという側面がありますが、地震についてはそうではありません。過去何千、何百年もの間、地震は季節を問わず発生してきたのです。では何故、地震があたかも冬の季語であるかのようになってしまったのでしょうか。私なりの考察はこうです。

まず、第一に過去数年間で特に人的被害の大きい震災が寒い時期に発生したということ(阪神淡路大震災1月17日、東日本大震災3月11日)。その際、避難生活を強いられた方々と共に毛布、カセットコンロ、自衛隊による暖かい食事の提供風景等がテレビを通じて繰り返し伝えられたことは少なからず影響したと考えます。そして次に、中央防災会議をはじめとする公的機関が地震災害発生のワーストケースとして、冬場の発災を想定していることです。こちらも同様にテレビやインターネットニュース等を通じて繰り返し伝えられています。このような点から、いつの間にか地震は冬のものというイメージが広く浸透したのではないでしょうか。

もちろん冬場の発災を想定することは悪いことではありません。むしろワーストケースを想定し、積極的に対策を進めようというアプローチは有用なことだと思います。ここで問題提起したいことは冬の対策だけで、他の季節(特に夏場)の問題を全てカバーできるのかということです。もしそうでない場合、夏場の対策は不要なのでしょうか。

例えばゴミの問題。非常用食品を備蓄している都内企業は約74.7%だそうです(「H26.5東京都内事業所の帰宅困難者対策実態調査について」より)。しかしそれらのゴミ処理までを検討している企業はどこまであるでしょうか。阪神淡路大震災の際、ゴミ収集能力が50%回復されるまでには2日間(通常収集への回復には約2週間)かかりました。その間、ゴミは事業所の中に置いておかねばならない、などということは十分に考えられます。特にこれが夏場であれば臭いの問題は深刻でしょう。その為、私はクライアント企業に対して、臭いがもれにくく、かつ多少踏んだり蹴ったりしても破損しない丈夫なゴミ袋の備蓄も推奨しています。非常用簡易トイレまで使用しなければならないような事態になれば、これは危機的な問題になるでしょう。

さらに体臭の問題も考えられます。想像してみてください。シャワーも浴びることのできない状況下で、100人の同僚と同じフロア内に3日間も滞在、もちろん停電によりエアコンは効きません。満員電車内に充満する臭いと蒸し暑さに耐える毎朝の30分間でさえ私はつらく感じます。

確かに寒さ対策は生命維持に直結することです。しかし、臭いによって事業所内滞在が困難になり、安全が確認されていない外へ従業員を出さねばならないということも同じようにリスクのあることだと思います。あまり災害のイメージが強くない、穏やかで暖かい季節だからこそ、敢えて災害について考えてみてはいかがでしょうか。いつもとは違うアプローチで社内のリスクが見えてくるかも知れません。

酒井希望(さかい・のぞむ)

酒井希望(さかい・のぞむ)
2006年、関西学院大学法律学部卒業。同年コクヨS&T株式会社入社。2007年より開始した防災ソリューション事業に携わり、全国約2,000社の企業備蓄計画を担当。自身の被災経験を活かし、「普段使わないからこそ、忘れられない備蓄」を提唱する。近年では商業施設を中心とした帰宅困難者対応のコンサルティング、他一般企業の災害対策検討会の外部委員等も多数手がけ、民間による災害対応能力の向上を目指している。