コラム

作っただけで終わってない?防災マニュアルのイロハ

作っただけで終わってない?防災マニュアルのイロハ

人を守る、施設を守る、会社を守る。こと災害が発生した場合、我々が守らなければならないものはあまりに多くあります。これに対して災害発生後、本当にできること(少なくともそのように想定していること)には人的、物的、または時間的制限があり、極めて限定的になるということは誰しもが理解していることでしょう。その為、企業の災害対策会議等の場では、「今のうちにできるだけマニュアルを整備しよう」という議論がなされることは少なくありません。しかし、「何でもマニュアル化」には大きなリスクがあります。

マニュアル

マニュアルというと、災害時に起こり得る様々な事象とその対策を綿密に検討して記載するものだと理解されがちですが、それでは本当の有事には全く使えないマニュアルとなってしまうリスクが高いのです。相手が自然災害である以上、その全ての発生事象についてケーススタディを行い、対策を明文化することは不可能です。加えて、明文化された対策の全てを少ないリソースの中で実行することも同様に不可能でしょう。それにも関わらず、多くのケーススタディを行ったものがそのままの分厚いマニュアルが仕上がっている状況であれば、そこには2つの点でリスクがあるといえます。

1点目は、本当に必要な対策が埋もれてしまうという点です。いざという時、自分達にはどれ程の人的、物的、時間的リソースが捻出できるのか、そしてその限られたリソースの中でも必ずやるべきことは何なのかが分厚いマニュアルでは見つかりません。つまり、「心配だから…」「念のために…」「あった方が良いから…」という項目はマニュアルには決して入れてはならないということです。当然規模や業種、ロケーションにも拠るところが大きいのですが、せいぜい10項目程度が限度でしょう。もし、お手元にあるマニュアルが、その中を探す必要のあるボリュームであれば、残念ながらまたブラッシュアップが必要ということです。

PDCA

2点目は、マニュアルが出来上がった状況に満足してしまうことです。どちらかと言えば、こちらの方がリスクとしては大きく、残念ながら該当する企業が多い様にも思います。そもそもマニュアルは決して完成するものではありません。マニュアルを作成する上で重要なことは、自分達の今の実力では対応できない範囲をはっきりと認識する為に、マニュアル作りという作業を通してそれを炙り出すということです。加えて、それを全員が理解した上で参加する必要もあります。その結果、できる範囲を今年は少しでも広げよう、去年よりもっと良い方法がないかを検討しようという努力の継続こそが重要で、マニュアルの作成をゴールにしてはいけないのです。あくまでもマニュアルはそれらの検討段階で生まれる副産物だと言い切ってもいいぐらいです。

最後に、マニュアルに登場する人物(役職)・組織は流動的なものです。だからと言ってバイネームで記載しないわけにはいきません。その為、最低でも年1回、理想は半期毎の更新が必要です。その際、人物(役職)・組織名称のみをアップデートすればよいということではなく、訓練と組み合わせた、アクション自体の検証改善が必要だということは言わずもがなです。故にマニュアルは決して完成することなく、作り続けることにこそ意義があるのです。

出典元:コクヨ株式会社 オフィスのチカラ